女性医師支援

医師としてのキャリアアップと、
結婚、出産、子育てとのバランスをどのように考えればよいのか・・・、
どこかに医師家庭をサポートしてもらえる環境はないのか・・・
とお考えの医師、医師家庭(男女を問いません)をサポートします。

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秋田大学医学部
総合地域医療推進学講座
准教授

蓮沼 直子先生

自分自身の人生をデザインしよう!

(秋田県女性研究者支援ネット 研究者リレーコラムNo.6より転載)

近年、医学部でもキャリア教育の必要性が認識され、秋田大学では必修カリキュラムとして始まっています。医学部で遅れていた理由は、医学部進学がすでに職業の選択となっているからだと思います。多くの医学生が臨床医を目指し、全員が医師国家試験を受験しますから。そのような理由で、今まではキャリア教育や就職指導が不十分だったかもしれません。

私自身も卒業直後はあまり自分自身のキャリアや将来のビジョンなど深くは考えていませんでした。また医師免許は国家資格なため、何かキャリアに問題が起きるなどとは全く考えてもみませんでした。

秋田大学医学部卒業後、皮膚科医として3年間働いたのち、アメリカのNational Insutitutes of Healthに研究留学する機会を得ました。日本ではまだ研究を始めておらず、何もわからないまま留学したので、ラボでは一から丁寧に教えていただきました。現地で長男を授かり、陣痛が始まるまで実験をして産後2カ月の産休を経て、ラボにもどりました。周りのアメリカ人女性研究者にも妊婦さんや子育て中の方も多くいて、いろいろ教えてもらいました。私が働いていたのはメラノサイトの生化学的解析をするラボで、様々な技術を教えていただき、実際に自分のプロジェクトや共同研究を行いました。ボスがとてもほめ上手で「初めてとは思えない、美しいデータだよ!」と言い続けてくれたので、自分は実験が得意なのかも?と勘違いして楽しく実験していました。留学では生活を一からスタートさせるので旅行とは全く違います。電話を引くのにも一苦労で、申し込みの電話をしたところ電話会社の様々な部署をたらいまわしされたあげくに切られてしまったことなど、たくさんのトラブルがありました。子供の病気や保育園選びなども言葉の壁を乗り越え、自分の納得のいく保育環境を整えて、仕事をした経験はとても得難いものです。帰国後友人には押しが強くなったなどとからかわれましたが、精神的にタフになって帰ってきたことは間違いなく、自分自身が仕事をしていく上での大きな武器であり財産です。

さて、ここまでは良かったのですが、2年9カ月の研究生活を終えて帰国した際、様々な状況が重なり、いわゆる専業主婦をしていました。数年間の離職を経て、県外で大学院研究生という立場で復職したのですが、その時に初めて何も考えずに離職すると後でどんなことが起きるのか知ったというわけです。私が留学して基礎研究をしたり、子育てをしている間に医学(皮膚科学)はものすごいスピードで進んでいました。初めて聞く新しい治療薬や治療法、疾患概念まで変わっているものもありました。さらに、社会人として復帰し、その上で患者さんの命を預かる医師としての復職が必要で二重の壁があることにも気付きました。その後秋田に帰り、フルタイムの医師としての仕事に戻ったわけですが、ブランクにより経験が少ないことはいまだにコンプレックスになっています。ただし、そのことが一生懸命皮膚科を勉強しようというモチベーションにもなっています。

自分自身が指導医になり、一度離職して復職した際に、想定外の状況を経験した立場からは、なるべく仕事を辞めずに続けてほしいということを学生や若手医師に話しています。「細くなった糸は容易に太くできるけれど、切れてしまった糸を紡ぎ直すことは難しい」どなたの言葉かわかりませんが、これは事実だと思います。ペースダウンしたとしても、臨床に触れていれば、容易に新しいことをキャッチアップできるのではないかと思います。

また、将来起こりうる様々なことを学生のうちから知っておくことが、キャリアを積む上で重要だと考え、現在医学部で行っているキャリアや男女共同参画の参加型必修講義を含む様々なイベントにつながっています。

現在キャリアの考え方は山登りキャリアと波乗りキャリアというのがあるそうです。山登りキャリアは登山道を一歩一歩登っていくもので、ゴールも道のりもクリアです。一方波乗りキャリアは海に出てみないとどんな波かわかりません。しけて荒れているときもあれば、波がなく自分で漕がないといけない時もあるでしょう。昔は一本道の山登りキャリアで先輩の後ろをついていけば間違いない!と思われていたのでしょうが、現在は女性も増えキャリアパスも多様化しています。おそらく女性は周りの状況やライフイベントに左右されることから、波乗りキャリアで行くことが多いと思います。でもキャリアを積んでいくと、ある地点から山登りキャリアにかわるかもしれません。男性も山登りキャリアと安心していてはいけません。現代は兄弟も少なく、両親の介護が男性にも容赦なく降りかかってくるからです。遠距離介護が必要なケースもあるでしょう。そうなると山登りキャリアから波乗りキャリアへ変更が必要です。いずれにしても柔軟に対応していかないといけないでしょう。

キャリアを考える際には、自分がどんなことがしたいのか、何が得意で何ができるのか、何に価値を置いているのかといった内的キャリアを考えながら進んで行く必要があります。経験により変わることも多いので、折に触れ考えてみてください。そして現在だけでなく未来をみて、3年後や5年後、あるいは10年後にどんな自分でいたいか、何ができるようになっていたいかなども考えて、できれば言語化しておきましょう。手帳などに書いておくとよいかもしれません。自分の将来のビジョンや医師(または自分の職業)としてのミッションを明確にしておくことで、もし波乗りキャリアの途中で海が荒れてどこに辿りつくのかわからなくて不安でも、山登りキャリアを進んでいてわき道にそれてしまったことに気づいても、しっかりと自分のキャリアを考え歩んでいけるのではないかと思います。

皆さんが、人生を振り返ってよい人生、よいキャリアだったと思えるように、これからもサポートできればと思っています。

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