SimTiki研修報告書

秋田市立総合病院 2年次研修医  奈良 佑

2019年6月27、28日にハワイ大学SimTiki Simulation Centerで行われたSimPLE研修は短いながらも、異国の地という慣れない環境で自分の能力を試すことができる貴重な経験となった。1年次から参加したいと考えていたため、申し込みの時点から高揚感はあったように感じる。

今回、秋田からの参加者5人に加え、長野から2名と熊本から3名の計10人の日本人研修医が参加した。初日の朝にはぎこちない雰囲気であったが2日間の研修を通して、同じ志をもつ仲間として協力しながら参加できた。

初日のone night oncall研修は、自分が当直医として働いている際に病棟で起きた急変患者に対しどのように対処するべきかを考え実行するワークアウトだった。英語環境に戸惑いもある中、短い説明ののちにすぐに始まりやるべき内容は多かった。模擬患者であるマネキンに対し、まずは状況を理解し救急治療が必要かどうかの判断をおこない、そのうえで何をすべきかを考え実行していかなければならない。その上、英語でのコミュニケーションが求められるとあって、満足のいく判断ができない場面が多かった。しかし、いざ振り返りとなると英語でも日本語でも患者は同じであり、急変した場合に求められる初期対応にはさほどかわりはないことに気づかされた。すなわち、日本語できちんと理解できている場面であれば、多少のコミュニケーションで不慣れな部分があっても判断に間違いが生じるということは少なかったように思う。マネキン相手という環境にいちはやく順応し、失敗してもいいから何か行動を起こすことが肝である。逆に言えば、日本語でも理解できないことや認識できない異常に関しては対応できないため、普段からの学習がなによりも大切であると改めて感じることができた。

2日目は小児救急と危機的状況に対するチームトレーニングであるCrisis Team Trainingがあった。特に後者のシミュレーションが、2日間の集大成という感じもあり、有意義なものになったと感じる。それぞれの役割が与えられ、チームとして機能することの大切さを感じることができた。何回かシチュエーションを変えながら行うのだがその都度ビデオでの振り返りが行われるため、はじめは自分たちのふがいない姿を見せつけられる。ただ急変患者の周りで、まったくチームとして機能していない5人が、最終的にはチームとして互いに指示を出し合い、コミュニケーションをとって治療にあたることができるようになった。何よりも、行動することが求められる点は日本での教育、研修と異なり新鮮だった。行動力はある方だと思っていたが、いざとなると知識不足が露呈し動けない場面も何度かあった。シミュレーションであることの最大の利点は、患者に害を及ぼさずに実践的に研修できる点である。振り返りの際には、自分の見立てで合っていることも多かったので、間違ってもいいから何らかの行動を起こす姿勢が求められていたように思う。“行動する”ことが実習を有意義なものにする唯一の方法であった。

2日間という短い間だったが、世界的にもリゾート地で知られているハワイという環境で医学に向き合う機会をいただけたことはとてもありがたいことだった。実際に、アメリカで働いている日本人医師の方とも関わることができたし、タイから来ている医師のかたとも接することができた。これらのつながりや、日本とは違う環境を体感できたことが何よりも今後の財産になると感じている。また、将来を考えるうえでも海外で働くとしたら実際にはどうするべきかをより現実的に考える機会にもなった。日本とアメリカと良い点も悪い点も互いにあるが、その一端を両方の視点からみつめることができたので、自分なりに吸収して日々の診療に役立てていきたい。

最後になりますが、今回の研修にかかわり、サポートして下さった皆さんへ感謝申し上げます。来年以降も後輩たちへこのずばらしい研修が続いていくことを願っております。

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”SimPLE” 研修報告2019①
”SimPLE” 研修報告2019②
”SimPLE” 研修報告2019④
”SimPLE” 研修報告2019⑤