JA秋田厚生連 由利組合総合病院
初期研修医 田中理貴

〇コース日程

8/7-8 SimPLE(Simulation Patient Learning for JP Residents)@SimTiki Simulation Center

8/9 am DMAT site in Hawaii  /pm Shriners Hospital for Children in Honolulu

「真夏にハワイで研修」という夢のようなコースに行って参りました。ハワイへ訪れるのは人生で2度目ですが以前は小学生の時だったので正直あまり記憶にございません。また、秋田県から補助金をいただき訪れることができるなんて夢にも思っていませんでした。今回のコースに参加させていただくにあたって3つの目標をたてました。①日常生活で英語をたくさん使う。②医療現場における英語を学ぶ。③楽しむ。コースに参加する以前はもちろんどのようなコースなのか想像さえも出来ませんので、折角頂いた英語を使えるチャンスを存分に活かそうと考えて臨みました。

8/7からコースが始まりました。Day1

  1. Group Presentation & Discussion
  2. 15名の参加者がそれぞれ英語で自己紹介をしました。秋田組の他は、熊本から研修医1年目が5人、長野から研修医2年目が3人、広島からシニアレジデントが3人というメンバーでした。
  3. Lecture by Dr.Ben ”Simulation in Medical Education ”
  4. コース主催者であるDr.Benから医学教育におけるシミュレーション教育の講義がありました。ファシリテーターのもと様々な事態を想定したシミュレーションに対してチームで対応し、制限時間を過ぎたら、チームで十分なデブリーフィングを行いそれぞれが課題をみつけて共有し次回に活かしていく、それを繰り返し多様な事態に対応できるような力を身に着けていくというのがシミュレーション教育の根幹になります。また、採血やCVcの手技も模型を使って学生の時からやっているそうです。ハワイ大学ではこの教育が1年生から行われ、多くの時間を使ってClinical Skillsを磨いています。低学年の時はほとんどの時間を座学にあててきた自分の大学とは全く環境が違うと感じ、同時に学生の時からこのような教育に身を置いていれば研修医になったとき、もっとスムーズに臨床に入れただろうなと感じました。講義が終了して、“なぜこのようなシミュレーション教育に多くの時間とお金をかけているのか?”と質問があがりました。それに対する答えは“For the patient’s safety”でした。確かに日本ではCVcをはじめとして多くの手技は、患者さんを相手にtry and errorで上達していきます。また急変時の対応も正直出たとこ勝負で多くの症例でうまくいかず、自分で反省して自らの経験としていくというのが私の周りの主流な気がします。昨今、医療訴訟や医療ミスが取り沙汰される日本でも今後シミュレーション教育は導入されていくであろうなと感じました。
  5. Lecture by Dr.Taki “Over view US residency system and medical system”
  6. 日本と米国の医療の違いについて日本人の瀧先生にビデオ講義していただきました。米国では医療保険点数が病院ごとに策定されており虫垂炎のopeひとつをとっても病院ごとに2万ドルのところもあれば3万ドルのところもあるというような体制です。保険も民間の保険会社に個人的に申し込みその保険で受けられる医療はだいぶ制限されているというお話でした。日本の国民皆保険の素晴らしさが、患者になったときに身に染みると仰っていました。また、米国で臨床医をやることについても教えていただきました。米国で医師になるためには多くの試験:USMLEをpassする必要があり、英語が堪能であることの証明:TOEIC・TOEFLや、米国の医師からの推薦状(いい意味でコネクションがないと働けない)が必要になるとのことでした。レジデントを経てフェローを終えると上級医とも対等な関係になるとのお話はやはり実力至上主義の米国ならではだなと感じました。
  7. Night on Call
  8. 患者急変時の対応について模型を使って学びました。それぞれ役割を決め(リーダー、記録、気道確保、モニター、薬剤、など)臨床推論していくというシミュレーションでした。大事なことは①ABCの確認②safety net(iv. / monitor / O2 / Help)をいち早く確立すること③stable or unstableの判断 をすることと学びました。デブリーフィングではチームの反省点を洗いざらいにし更に学びが深くなりました。

8/8 Day2

  1. Pediatric Emergency cases by Dr.Jannet
  2. 小児ケースでシミュレーション教育を受けました。小児においても基本的に大事なことは①ABCの確認②safety net③stable or unstableと変わらないが、小児においては①患者本人が教えてくれない②薬剤投与量が体重あたり量である③急変時は急激に状態が悪化する、などの成人との相違点があると学びました。ファシリテーターがご家族役になりチームで急変の対応し、現場さながらの緊迫した状況でシミュレーションを行いました。
  3. Crisis Team Training by Dr.Ben
  4. 最後に病院内急変対応チームとして急変に対応するというシミュレーションを行いました。チームにおいて役割分担を明確にすることが大切で、それぞれの役割を理解しあいそれぞれの役割を全うすることでチームがより機能すると学びました。シミュレーションは3つのcasesを経験しました。特に③のcaseではこのような状況までシミュレーションしているのかと驚き、同時に看取りという大きなイベントに関わらず上手く対応できなかった自分たちの未熟さを反省しました。いずれのcaseもデブリーフィングの時間で、自分たちで議論し問題点を挙げそれぞれの学びとしました。

以上で2日間のSimulation trainingを終えました。普段の研修では体験できないような貴重な勉強をさせていただきました。

8/9 am DMAT site in HawaiiではDMATの機材庫かつ本部に足を運びDMAT in Hawaiiの成り立ちや仕組みについて講義をしていただきました。

8/9 pmはShriners Hospital for Children in Honoluluに訪れました。病院の中を巡りながら、Shriner’s Hospitalの理念や背景についてお話を伺いました。主に小児神経を専門にしており、外傷や発達障害、知的障害に伴う難治性の神経障害を診ている病院です。環太平洋地域から子供たちが集まり、民族、肌の色、信条、性別、能力、生まれ、家族の資産などに関わらずベストな最先端医療を提供することを理念に掲げています。移動費、診察費から入院費、治療費まで全額Shriner財団が負担します。家族のcareも充実しています。実際の医療に触れたわけではないですがその理念に感動しました。

研修を終え自分一人ではまず経験できない、大変貴重な経験をさせてもらったと改めて実感しました。研修以外の時間でも英語を使う機会が多数あり英語力の上達を感じました。研修やその準備に関わっていただいた皆様に深く感謝を申し上げ、将来いい医者になることで恩返しをしたいと思います。

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●2018年ハワイ研修”SimPLE” 研修報告①はこちら

●2018年ハワイ研修”SimPLE” 研修報告②はこちら

●2018年ハワイ研修”SimPLE” 研修報告③はこちら