FunSimJ 活動報告
秋田大学医学部附属病院 心臓血管外科
山崎友也
この度、FunSimJシミュレーション教育を受講した。本コースは、シミュレーション教育の基本から高度なシナリオ設計、そして効果的なフィードバック方法に至るまで、幅広い知識と技術を学ぶ貴重な機会であった。何より参加者が「楽しむ」ことに重点を置いていることが強調されていた。
特に印象深かったのは、シナリオ設計におけるリアリズムと学習目標の明確化の重要性である。シミュレーションは、実際の臨床場面に極力近い状況を再現することで、参加者が現場で遭遇しうる問題解決のスキルを効率よく習得できる。しかし、重要なのはシナリオが明確な学習目標に基づいて設計されていることであった。学習目標が明確であれば、シナリオの内容やフィードバックの焦点がぶれることなく、学習者の学びが深まる。さらに学習者の理解を深めるにはデブリーフィングが最も重要であることを学んだ。学習者中心のプロセスが重要で、何をやったか、いつやったか、どのようにやったか、なぜやったか、どうすればもっと良くなるかを自発的に考えるよう促していく必要がある。言葉で理解することは簡単であるが実際に行ってみると難しく、指導側の成長も必要であると感じた。単に間違いを指摘するのではなく受講者が自らの気づきから改善策を見出すために必要な会話、問いかけを今後も学んでいきたい。心理的安全性を重視する教育環境も重要であると学んだ。シミュレーションはストレスの高い環境を再現するため、参加者が自由に失敗し、その失敗から学ぶことができる環境作りが重要である。FunSimでは、参加者が安心して挑戦できる場を設け、その後に行うデブリーフィングでしっかりと振り返るプロセスが強調されていた。この心理的安全性の確保が、シミュレーション教育の成功に不可欠な要素であると改めて認識した。
今回のコースで学んだ内容を現在、行っているCALS(開心術後心肺蘇生プロトコル)に活かしていきたい。現在、CALSでのトレーニングではいくつかのシナリオが設計されている。日々、反省会を行うことで学習目標を明確にし、よりリアリティのある状況を再現できるよう努力していきたい。まだ指導側としてデブリーフィングに参加できておらず、今回の経験を経て適切に活動を行なえるよう努力していきたい。
今までは患者を通じて得た経験、知識を蓄積していきより良い臨床医となることが重要であると考えていた。いわゆる、見て、行って、教えるという愚行である。今回のコースを参加することで上記は古い行いであると痛感した。これからは患者管理、手術などの様々な分野で可能な限りシミュレーションを大事にし、適切なレベルアップをしていきたい。さらには後輩達へのシミュレーションの大切さを普及させていきたい。何よりとても「楽しい」2日間であった。この場を借りて、支援していただいたあきた医師総合支援センターに深く感謝申し上げる。