医療者教育の中で一定の役割を果たしつつある、医学教育と芸術のコラボ。
秋田で初めてアートを題材にした「対話型鑑賞ワークショップ」を開催しました。

日頃私達は診療の中で、身体所見や検査値だけでなく多くの視覚情報を利用しています。例えば、服装を見てその人の趣向をイメージしたり、清潔感を判断したり、寒がりか暑がりか、などということを判断しています。しかしこれまで、このトレーニングは経験が頼りで、トレーニングする機会がほとんどありませんでした。「対話型鑑賞」を行うことで、視覚情報を言語化し、他の参加者と共有することで楽しみながら上記を体験・トレーニングすることができます。

今回、全国の学会や医学部で対話型鑑賞を取り入れたワークショップや医学部教育を行っておられる、ミルキク代表・森永康平先生をお招きし、「対話型鑑賞ワークショップ」を開催しました。

医学部学生4名、看護師1名、初期研修医2名、医師2名、医療系事務スタッフ4名の13名の方にご参加いただきました。多様な職種やバックグラウンドを持つ方にご参加いただき、とても楽しいワークショップとなりました。

はじめに、一つの絵画を見て見たもの・気づいたことをグループごとに挙げていきました。すると自分に見えていないことが他者の視点で表現され、自分に見えていない情報がかなりあることに気付かされました。絵画のどこに・どのようなものが・どういう向きで置かれているか、時刻は何時頃か、季節はいつか、描かれている情景の年代はいつ頃なのか、描かれている人の性別・年代・職業・感情・健康状態など、本当に色々な情報が隠れているものです。次にグループの半分のメンバーが絵を見てそれを言葉で説明し、見ていない残りの半分の方がその情報を聞いて絵を書き、実際の絵画と照らし合わせるワークを行いました。凄くシンプルな構図の絵でも伝えることの難しさ、視覚情報を言語情報で共有することの難しさなども体験できました。最後は絵をみてみんなで情報を出し合い、さらにそこに描かれている物語を考えてみる、というワークを行いました。グループごとに全く異なるストーリー展開が出てきて、視覚から得た情報を言語し、さらにそこから推察したストーリーの多面性を体験しました。

 開催後アンケートより、みなさんがとても楽しく取り組んでくださったことがわかりました。

・感想を話すだと大変そうと思いましたが、書かれているものついて述べるのだと参加しやすかったです。絵をみていない人にもイメージできるように説明するのは難しいなと思いました。

・年齢関係なくフラットに意見交換でき、とても楽しかったです。目には入っているけれど認識できていないものが意外とあることや、見たものを相手に正確に説明することの難しさを実感しました。見方や考え方、伝え方を少し意識するだけでも良いトレーニングになることがわかったので、日々の学習の中でも取り入れていきたいと思いました。

・終始ためになる話ばかりで、またゲーム感覚でとても楽しめました。

・改めてとても楽しかったです。言語情報のみで絵画を伝え、絵をみていない相手に描いてもらうWSはとても印象に残るものでした。楽しさと同時に如何に視覚情報を言語のみで共有するのが難しいかということが体験できたし、その限界を知って現場にでていくとまた違った情報共有が行えそうです。

年齢や経験を問わず、職種に関係なく参加できるワークショップでもあり、また次年度も継続開催をしたいと思っています。また、たくさんの方にご参加・体験いただければと思っています。

総合臨床教育研修センター
岡﨑三枝子