SimPLE参加後の報告

大館市立総合病院 2年目研修医 田村一平

ハワイ大学医学部SimTikiシミュレーションセンターにて、2023年10月10日と11日の2日間、日本人研修医向けトレーニングコース”SimPLE”に参加してきましたのでご報告です。

・SimPLE応募の動機

私は大学3年次に、学会や英文の医学書を読む勉強会への参加の経験から英語学習の必要性を実感し、TOEICの勉強を始めました。元々英語は得意ではなく部活との両立という点でも大変でしたが、大学4年次に915点を取得し、成績優秀者に贈られる弘前大学同窓会「吉田基金」TOEIC賞(国際化教育に力を入れていた弘前大学元医学部長・元学長である吉田豊先生の創設した賞)を授賞。授賞式では将来の留学を勧められ、医学における国際的な視野に関心を持ちました。
また、初期研修医になり受講したNCPR・PALS・ACLSを通して、医療シミュレーション教育は学習方法として有意義であることに加え、チーム全体でレベルアップしていく楽しさがあることを実感しました。
私がSimPLEの存在を知ったのは、学生の時に見た大館市立総合病院のパンフレットです。あきた医師総合支援センターのサイトも閲覧し、私にとって魅力的な内容だったのが応募理由です。

・SimPLE参加が決まり、以下の3つの目標を自分に設定しました。

  • Experience studying medicine in English:医学を英語で学ぶ成功体験を手にする。
  • Expand my field of vision:ハイレベルな医療シミュレーション教育の体験やアメリカの教育体制のレクチャーから、自身の国際的(多角的な)視野を広げる。
  • Enjoy:研修と、快適な常夏ハワイを楽しむ!

・研修概要と感想

Day1-October10
Introduction/Lecture: ハワイ大学医学部の概説やSimTikiで行っている医療シミュレーション教育の説明がありました。自分自身の学生時代のシミュレーション教育の経験といえば、PBLやOSCEと麻酔科の臨床実習で少しといった感じでした。ハワイ大学医学部では医学生1年次から医療シミュレーション教育を行う点で教育体制が全然違う衝撃を受けました。

Resident Presentations:英語で参加者それぞれからの自己紹介です。今回参加したのは秋田大学研修医2年目1人&熊本県の人吉医療センターから研修医1年目3人が参加し、合計5人での研修でした。自分にとっては全員が初対面でしたが、その後の研修ではお互い助け合いながら上手く研修ができたと思います。研修後には全員でチーズバーガーを食べに行ってお話もできました。秋田大から参加の佐藤先生とは、マラサダを食べ、ビーチで泳ぎ、夕日をバックにかっこいい写真を撮り、ビーチ横のライトアップされたバーでカクテルを飲み、とハワイのリゾートも満喫できました。

Orientation to the Simulator:動画撮影が行える部屋と、チームパフォーマンスに有用なホワイトボードなどの物品と、ハイテクなマネキンなどの説明がありました。シミュレーターの経験に乏しい自分にとって、まばたきをして、瞳孔の大きさが変わり、声も出るマネキンはそれだけで驚きでした!

Medical English:問診に最低限必要な英単語などの確認をゲーム感覚で行いました。

Night on Call Case Scenarios:数回のシナリオを通して、どんな状況でも一貫して「ABC・stableかunstableか・”HOMI”」を徹底的に行うことを学びました。各シナリオ後のブリーフィングでは何をしたか何をしていなかったかを振り返り、それらの行動の理由をはっきりさせる非常にロジカルなブリーフィングが行われました。また、他に何かできることはなかったかといった建設的なアドバイスも受け、医学的な内容としても勉強になりました。

Central Venous Catheter placement:CVは実臨床で遭遇する頻度が高い割に、卒後にレクチャーを受けたのは初めてでした。シミュレーターで安全な環境下でじっくり練習させていただけたのが有り難かったです。

Day2-October11
Advanced Airway Cases:小児の気管挿管を含む気道管理と、成人の気管挿管困難な事例について学びました。声門周囲の厚みを変えられるハイテクなマネキンにまた驚愕。気道管理の一般的な内容に加えて、バルーンが2つある声門上気道確保器具の使用、ブジーを用いた気管挿管や、緊急輪状甲状間膜切開の手技を確認することもできました。実際にマネキンに切開できるとは思っておらず、やはり実際やってみると段違いの理解度で、手技の過程に自信がつきました!

 Lecture (Overview of US residency and medical system):現在ハワイ大学内科チーフレジデントとしてご活躍されている西村義人先生のレクチャーがありました。米国の医学教育や、ご自身の経験も踏まえてキャリアプランのお話をしていただき、刺激的な内容であり自分の視野が広がりましたし、モチベーションアップにもなりました。

 Crisis Team Training:より良いチームパフォーマンスのためのレクチャーとトレーニングです。役割を明確にする点が大いに参考になりました。シナリオを通じて実際に挑戦して、その後に撮影していた映像も参考にしてブリーフィングをたっぷりと行いました。

 Laparoscopy Skills Challenge:腹腔鏡下で対象物を摘んで持ち替えて移動して離すタイムアタック形式でのトレーニングです。腹腔鏡をほぼ触ったことがなかったので、これは自分にとっては難しかったですが楽しめました。

・全体的な総括

研修に参加するにあたり設定した自分の目標は、全てクリアしました。SimPLE参加を経て、これまで自分がやってきた医学や英語の勉強が一つ実を結んだ感覚があり自信がつき、モチベーションアップにつながりました。このような貴重な経験ができたのは、多くの人の協力支援のおかげでもあります。守時先生、あきた医師総合支援センター、大館市立総合病院の先生や事務、SimTikiのBen先生をはじめとする講師陣、フェローとして来ていた日本人の先生、レクチャーしてくださった西村先生、そして一緒に研修に参加した先生方との縁すべてに感謝したいと思います。ありがとうございました。

その他の参加者の報告書は、以下リンクからご覧ください。

”SimPLE”研修報告①(佐藤幸喜先生)