秋田赤十字病院
2年目初期研修医 齊藤 文菜

平成30年2月16日から2月18日にフロリダで開催された9th Annual International Women in Surgery Carrer Symposium(WIS)に参加させていただきました。学生時代の講義でWISの存在を知っておりましたが、興味はあるものの英語でのコミュニケーションについては自信がなく、海外の学会にも参加したことがなかったため、WISに参加することには強い不安がありました。しかし、後期研修開始を目前に控えた今、WISのような会を通して、海外や国内の女性外科医がいかにしてキャリアを形成しているのか、何を目標としているのかを知ることは自身のこれから人生設計において非常に参考になるのではないかと思い、思い切って参加を希望しました。

学会1日目は15時からのworkshopで始まりました。このセッションはFellows向けとUndergrades/Medical Students/Residents向けの2会場に分かれたため、後者に参加させていただきました。参加者の多くはMedical Studentであり、Residentは私を含め数名程度でありました。いかにして負債を効率よく返済するか、履歴書はどのようにして書くのか、面接のコツはなにか、エレベータースピーチでいかに心をつかむか、といった主に医学生向けの実践的な内容でしたが、日本の医学教育の場ではまず教わらないような非常に興味深いものでした。アメリカで医師になるには、4年生大学の卒業を経て4年生の医学部に入学するため、卒業までには最低でも$183000が必要であり、多くの医学生は入学時より自分でローンを組み、自身でその返済をしています。年収の良い外科医は非常に人気であるものの、レジデントとして働くことのできる枠は限られているため、成績上位者が優先的に研修先を選べるアメリカのシステムでは外科医は非常に狭き門であるとのことでした。結婚・妊娠というライフイベントがあっても離職という選択肢はほぼなく、アメリカの女性医師は皆早期に復職してキャリアを重ね、負債の返済をしていくようです。アメリカの医学教育についてまったく知識のなかった私は、この事実と講義の内容にただただ驚くばかりでした。

2日目は朝7時から海外のMedicalStudent向けの講義で始まり、その後、午前中は1日目と同様にFellows向けとUndergrades/Medical Students/Residents向けの2会場に分かれ、午後は全員同じ部屋での講義でした。1日目と比較して参加者は2倍ほどに増えており、HighSchoolStudentsからFellowの先生方まで幅広い年代の人がいました。Residentとして生活する上での心構えや日々の過ごし方、関係の築き方、精神・身体の健康について、メンターとの関係性についてなどの講義でした。午後はSNSとの付き合い方についてなどの講義を受けました。

最終日は朝8時からSexual Harrassmentについて、チームワークについてなどの講義を聞き、11時ころに閉会しました。

どの日程でも質疑応答の時間には参加者、特に医学生が、会の時間が足りなくなるほどに積極的にspeakerに質問をしており、その姿勢に圧倒されるばかりでした。私の拙い英語力では聞き取るのがやっとで質問まではできず、せっかく話しかけていただいても会話がスムーズにできず会話が途切れてしまうなど、反省すべき場面が非常にたくさんありましたが、英会話スキルを伸ばすことへのモチベーションにつながりました。

日本の女性医師対象の講演会では、産休・育休と復職といった卒業後のキャリア形成とライフプランがテーマになることが多いと思われますが、WISではキャリア形成とライフプランはすでに大学入学の時点から考えるべき問題として取り上げられており、文化の違いと制度の違いを強く感じました。

また、日本とアメリカでの医学教育やキャリア形成についての違いを知り、早期から将来設計をして明確な意思と目標をもって道を切り開くアメリカのMedical Student/Residentの姿勢を目の当たりにして、今後の自身のキャリア形成についてどれほど積極性と具体性が欠けているのかを知ることができました。制度の違いもあるため、キャリア形成の参考にすべてを取り入れることはできませんが、この学会に出席できたことはとても良い刺激になったと思います。

WISへの参加は、自身を振り返り、モチベーションを高め、将来設計について考える良い機会になると思います。外科医になると決めているのであれば、できるだけ早くにWISに参加してみることをぜひお勧めします。

最期になりましたが、今回の会の参加にあたり、関係者の皆様にこの場をお借りして感謝申し上げます。本当にありがとうございました。


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