Sim Tiki研修報告書

秋田大学医学部附属病院 研修医2年目 五十嵐光汰

私は以前から英語圏での医療に興味があり、医学部6年次はシカゴでの1ヵ月間の病院実習を予定していましたが、COVID-19の流行により中止になってしまいました。そうした経緯もあり、今回ハワイの医療に触れられる機会があると知り、参加を希望しました。私は今まで留学の経験なく、英語検定は中学時の準2級のみであり、今回参加が決まった後も英語でのコミュニケーションに対して不安がありました。しかし、実際研修が始まってから私の拙い英語に対して、講師の先生方は理解しようと私の話した内容の確認をして下さったり、逆に私が理解できなかった際には、英語の表現を変えて伝えてくださったりと、英語が得意ではない方に対する配慮がきちんとされており、安心して研修を行うことができる環境だと感じました。そのため英語で発言することに対して億劫にならずに、なんとか自分の考えを伝えることができたと思います。

今回秋田県からは2年目の研修医が4名、熊本県から3名、計7名で研修が開始されました。秋田県の募集は7名でしたがCOVID-19の影響で結果として4名のみの参加でした。

<研修1日目>

簡単な施設案内の後、1人1分程度の自己紹介を英語で行いました。その後、英語での問診や医学英語の講義を受け、いよいよシミュレーターを用いた夜間救急シナリオが開始されました。このシナリオは1チーム3-4人で行い、それぞれの役割はリーダー、それ以外の人で患者のABCDE評価、状態は安定か不安定か、HOMI(help, O2, Monitor, IV)の実施、検査・治療方針決定まで5分間で実施するといった内容でした。シミュレーションといえどマネキンは発語可能で臨場感がありました。各シナリオ終了の度に、良かった点や改善点についてのディスカッションを行いました。最初のシナリオではコミュニケーションが十分ではなく、刻一刻と変化する患者の状態を全員と共有できなかったことで、その分無駄な時間がかかってしまいました。改善点としては各々の役割をはっきりさせ、全員と情報共有することを挙げ、次のシナリオから徐々に意識して臨めたと思います。

中心静脈カテーテル留置の練習は、気を張らずリラックスして学ぶことができました。

<研修2日目>

午前中の前半は成人のバッグ換気や挿管、気管切開について、後半は小児での方法をマネキンで学びました。気管切開は今まで救急当直では経験がなかったため、確認できてよかったと思います。その後アメリカでの医学教育のついての講義を受けました。私が受けてきた医学教育と異なると感じたことは、アメリカの医学生は1年生から少人数のチームで臨床推論を行う授業があるという点です。当然何も医学的知識がない状態で進めていくわけなので、最初はわからないことが多いですが、その日わからなかったことを分担して次の講義までに調べてまとめ上げ、チームメイトと知識を共有するといったスタイルで、医学生の主体性に重きを置いているようです。私は3年生から臨床推論が始まりましたが、それと同じことを1年生が行うということに驚きました。

午後は腹腔鏡を使用したシミュレーションでした。時間を競ってブロックを移動させ、楽しみながら技術を上達させることができるトレーニングだと感じました。

Crisis Team Trainingでは2日間で学んだことの集大成として、自分たちの行動をビデオ撮影しつつシナリオに臨みました。患者に対して7人で対応したため、自分が何をするべきなのかといった役割(ABC管理、胸骨圧迫、モニターやiv、リーダーなど)がとても重要で、最初のシナリオではそれらが明確ではなかったため、後でビデオを確認すると茫然と立ち尽くす姿が映し出され、先生からWhat are you doing?と確認されてしまいました。またこのとき何を考えていたのか、なぜこの行動をとったのかを問われ、今後の改善点をディスカッションしました。時間を無駄にすることなく最善を尽くすには、それぞれの役割を明確にして情報を共有することが重要だと改めて実感しました。

最初は英語圏での研修は、私にはハードルが高いものと考えていましたが、とても有意義な2日間を過ごすことができました。アメリカの文化、医療、教育に触れたことで、日本以外の視野を以前より身に付けることができたと思います。最後になりますが、今回貴重なハワイ研修の機会を与えて下さったあきた医師総合支援センターの方々へ感謝申し上げます。

その他の参加者の報告書は、以下リンクからご覧ください。

”SimPLE”2022 研修報告①(五十嵐陽美先生)

”SimPLE”2022 研修報告③(土田英臣先生)

”SimPLE”2022 研修報告④(髙橋勝大先生)